no.001「教え子からの贈り物」


修理やオーダー製本させていただいた本の
エピソードを
BOOK STORYとして紹介しています。

『帆船の絵のアルバム』1940年代|布装 62頁|個人蔵

依頼主は元教師。太平洋戦争の最中、東京の女学校で勤めていた。生徒たちにとって”憧れの先生”だったのだろう。慕ってくれた教え子2人がときどきプレゼントをくれたそうで、その中の一つが依頼品のアルバムである。表紙と背表紙には、インパクトのある帆船の絵が描かれている。

結婚して学校を退職したのちに戦争は激化し、そして終戦をむかえる。このアルバムには、戦後の激動の時代を家族とともに生きてきた一コマ一コマの写真が収められている。

それから70年以上、依頼主とともにアルバムも歳を重ねてきた。傷んだ表紙はテープで補修され、写真もところどころはがれかかっている。

今回の修理では、長年の埃や汚れのクリーニング、破れた台紙は和紙で補修し糸綴じで丈夫に仕上げる。特に傷んでいた表紙は、土台を新しく作製しその上に元の表紙を貼り込むことで、元の雰囲気を保ちつつ修理する。

Before
 
After
 

できあがったアルバムを手に「アルバムがきれいになって、思い出までも鮮やかになるようだわ」と言う。過去に引きづられてしまうことはないかと尋ねると、「過去があるから今があるのよ」と力強く言った。

依頼主は現在97歳。アルバムをくれた教え子たちは今、どうしているのだろうか。今でも大切に引き継がれ、何より、開くたびに彼女たちのことをとても嬉しそうに話してくれたことを伝えたい。このアルバムには、教師時代の誇りと家族とともに生きた人生の誇りがつまっている。

このSTORYは、依頼主の許可を得てうかがった話をもとに書いています